セントロの路上生活者

 セントロの

 犬の散歩をしていると、ビル軒下の路上生活者の寝床に目がいった。見ると、寝床横のビルの壁にキリストのポスターが張ってあり、その下に聖書が置いてあった。主は、40歳以上の男性でいつもそこで寝起きし、昼間はのんびりと寝そべって毛布に包まって行き交う人を眺めている。ちょうどその時は、食べ物を探しに出ているのか、いなかった。いないときは、いつも毛布などの数少ない持ち物は整理整頓されている。随分きちんとした信じ深い路上生活者だな、と興味を持った。そのまま犬を引いていると、その路上生活者がゴミ箱にゴミを捨てているのが目に入った。

 通常、ビルの管理人は路上生活者が軒下でずっと居続けることを嫌って、追い出しにかかかる。ひどいところになると軒に穴がたくさん開いた水道管を通し、時間が来ると水がシャワーのように落ちてくる所さえある。うちのアパートなども警備員が常に追い出しているようである。追い出したりするのはちょっとかわいそうな気もするが、仕方ない面もある。彼らは周りを汚すし、ひどい人になると壁際で煮炊きし、非常に危ない。一度などはアパートの建物の壁で煙がくすぶっていたので、慌てて門番に通報したこともある。

 先の信心深い路上生活者は、いつもきれいにするように心がけているようで周囲はいつもすっきり綺麗である。管理人も見て見ぬ振りをしているのだろう。

最近はテントに住む路上生活者が増えた

 セントロ付近の路上生活者は経済危以来とにかく増えた。警備されていない公園や広場には必ずいるし、雨風が防げるビルの軒下には数人が毛布に包まって寝ている。最近は政治関係者か、ボランティアが寄付したのか、テントを張って寝る人が増えてきた。日本のようにダンボール箱で寝場所を造る人はあまりいない。せいぜい周りを囲うくらいで、小屋の様なものを作る人は見たことがない。多くは、毛布やビニールに包まって寝るくらいである。

ひとつには、サンパウロの路上生活は定住せずに移動する人が多いからだと思う。また、しばしば、心無い若者が、アルコールを巻いて火をつけたりするから、紙の家は怖いのかもしれない。また家の様なものは、警察の手入れがしょっちゅう行われているから、安心して作れないのかもしれない。そして、何より大きな原因は、ブラジルのダンボールの強度である。日本のものの5分の1もない。その上、質も悪く雨にぬれるとすぐ湿ってしまう。そんなことからダンボールの小屋はほとんど存在しない。

先日、25・デ・マルソ問屋街の広場で、路上生活者が木とビニールで作った小屋が撤去されるのを見た。そこで路上生活者が煮炊きしながら生活をしていたのだ。確かに汚いし、悪い印象はぬぐえない。その広場でちょっと休むなんてことは当然おこらない。おそらく付近の業者か、住人から通報が入ったのだろう。もしかしたら、路上生活者が万引きや麻薬の密売をしていたのかもしれない。警察と撤去業者がトラックを乗りつけてやってきて、あっという間に彼らの小屋は撤去され生活用具は持ち運ばれてしまった。彼らは茫然と眺めているだけだった。そこに住んでいたのは7,8人であったから、抗議もできなかったのだろう。もし、50人以上いれば騒動になったかもしれない。

 

路上生活者が飼う犬もきちんと首輪がつけられた犬が多くなった

路上生活者が飼う犬もきちんと首輪がつけられた犬が多くなった

 路上生活者は犬をたいてい飼っている。彼らを襲う若者達がいるあるので、番犬として飼っているのである。以前はこうした犬のほとんど放し飼いで、早朝には野犬のように群れを成し、犬の散歩する人達を襲った。僕も5匹の犬に襲われ追い払うのに苦労した。最近はこうした犬たちの苦情が増え、野犬狩りが行われているのだろう。路上生活者の犬もリードをつけている犬が増えた。 

 だいぶん前に、ブラジリアで酒を飲んで寝込んでいるインディオに火をつけ焼き殺した事件があった。犯人は政治家の子供であったと思う。部族のインディオたちは怒り心頭で大規模な抗議を行った。犯人は逮捕されたようであるがその後どうなったのかあまり報道されてない。路上生活者も同様の事件が多い。最近では韓国系2世がゴミ収集人を車から大型獣用の弓矢で殺害した事件があった。このような襲撃を恐れて、多くの路上生活者は多人数で寝るし、集団で生活したりしている。

 以前の路上生活者と言えば、ピンガに酔っぱらって昼間からへべれけになる程度で人畜無害の人間が多かったが、最近は麻薬の蔓延で、麻薬常習者が多く、麻薬欲しさに強盗や泥棒に変身してしまう人間が増えた。それだけに、以前のように路上生活者は悪い事はしない、とは言い切れなくなってきたし、注意をしなければならなくなった。

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