町を覆う不安

 

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セントロの夕の雑踏

「おはようございます」

と、いつも愛想よく応対してくれる、太った明るい男性の銀行窓口に支払に行くと、今日はむっつりとして何も言わない。顔にも心なしか剣があるような感じがある。どうしたのだろう。今日は何か気の食わないことでもあったのだろうか? などと考えているうちに支払が終わった。「ありがとう」と言って窓口を離れた。普通だったら「こちらこそ」と言ってくれるのだが、今日はその返答さえもない。

 この頃、応対の悪さを感じるのは、銀行の彼だけではない。薬局、スーパー・・・皆一様に応対が悪くなった。まるで笑顔を忘れたようだ。その上、10、20センターボ(4円、8円)と言った小銭のおつりをくれないことが、数回続いた。たいした金額でもないので言い立てはしなかったが妙に腹立たしい。一言「ごめんなさい、おつりの小銭がないので」と言われれば、腹立たしくもないのだが、知らん顔をしているだけである。薬局で、ずっとおつりを待っていると、レジの姉さんは僕がおつりを待っているとさえ気づかずにレシートを待っているものと勘違いしてレシ-トを渡してきた。おつりの事はいっさいわすれているのだ。よっぽど言うかと思ったが、わずか20センターボのおつりを要求するのも恥ずかしくて言うのをやめて店を出た。たまたま僕がサービスの悪い人間にあたっているだけかと思い、日本やアメリカに仕事でよく旅行する友人に聞いてみた。

「いや、確かに悪くなっていますよ。僕は2年ほど前から気にかかっていました」という答えが返ってきた。

 最近、働く人々が妙に苛立っているような気がする。物価の値上がり、治安の悪化、政治不安、公共機関のサービス低下などが、大きなストレスを人々に与え、生活に余裕・潤いがなくなりギスギスし始めているのだ。

 最近暴露されたペトロブラス(石油公社)汚職事件では、政治家や資本家が何億レアルもの汚職贈賄をして懐に入れていることが発覚し、国民は激怒した。ちょうど物価上昇時期と合わさり、この汚職事件をきっかけに教員や市の職員の賃上げ要求スト、デモが増えたような気がする。政治家たちは汚職贈賄で、国民の血税を吸い取り私利私欲を肥やしているのにもかかわらず、数%の賃上げしか受け入れない州政府や市に対して、教員や公務員たちは幹線の封鎖や、2か月にも及ぶストに踏み切っている。

 こうしたニュースの上に、殺人事件や強盗事件のニュースを毎日見ていると、いつ自分も危険にさらされるかもわからない不安に襲われる。さらに支払や買い物で、生活の苦しさを実感する。こうした様々な暗い話題や状況が人々を陰鬱にし、笑顔さえ奪い取ってしまう。

 現在、ジウマ大統領の力はどんどん失われ、所属するPT党にも疎遠にされ四面楚歌状態である。おそらくすべての責任を負わされて失脚することになると思われる。国の代表であり、国をよくするために率先していかなければならないはずの大統領がこのざまであるから、国民が不安になっても仕方がない。

最近のサンパウロは、政情不安、治安不安、先行きの不安などに覆われ、さらに毎日続く肌寒い曇りの天候が、人々の気持ちを余計に陰鬱な気分にしている。

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