もてはやされるアプリ

フリーのwifiがあるところは人が集まる。ただし、近くに警察官がいるところに限る

フリーのwifiがあるところは人が集まる。ただし、近くに警察官がいるところに限る。©akinori kajisako

 

最近のブラジル、特にサンパウロは何でもアプリになりつつある。 サンパウロ市では、ハダジ市長の大英断で安くて便利なウーバーが拡がり、それとともにアプリも拡がった。アプリの手軽な便利さと最新の技術が受けたのだ。

2010年ごろにスマートフォンが発売されるや、あっと言う間に拡がり、セルラー(携帯)=スマートフォンになってしまった。PCを使わなくてもどこでも気軽にインターネットが使えること、そして「世界の最新技術」ということが、新しもの好きのブラジル人に受けた。当時、それほど裕福そうに見えない人々が、十数回の分割払いで購入し、自慢げにスマーとフォンを操っている姿をバスやメトロでよく見かけたものだ。新しもの好きで、自慢するのが大好きなブラジル人の気持ちを激しくくすぐった。飛びつくように、猫も杓子もスマートフォンを買った。拡散のスピードは日本より速かったのではないだろうか。ところが、せっかく高価な高機能スマートフォンをもっているにもかかわらず、多くの人はゲームかメッセージ、メールのやりとり、写真・動画を写すだけであった。

スマートフォンの拡散とともに、携帯強盗やひったくりが横行するようになった。何しろ、高価なスマートフォンは10万円以上するから、犯罪者には格好の獲物である。強盗事件の6割がスマートフォンでサンパウロ州では20分に1台のスマートフォンが盗まれという。しかし、数年前から1万円以下で購入できる中国製の安いスマートフォンが入ってきて一層すそ野は広がった。

スマートフォンの利用方法は、今までの、メッセージやメール、ゲーム機から、アプリが広がるにつれ、日本のようなお財布ケータイの役割を担うようになりつつある。レストランや肉屋でもアプリを利用して商品を販売するようになったし、市も車の罰金やゾーナアズー(路上駐車チケット)をアプリに切り替えようとしている。もしかしたら、麻薬の密売までアプリで行われているかもしれない。

しかし、問題は治安である。日本の様な治安の良いところなら、携帯を盗まれるなんてことはほとんどないだろうが、ブラジルでは盗まれる確立はかなり高い。自分の大切なデーターを入力しているスマートフォンを奪われ、そのデーターを悪用されることは十分考えられる。いくら便利なアプリがあっても、おサイフケータイとして利用することは個人的には考えられない。貴重な個人情報を入力し、仕事通信の基盤となっているスマホは、盗まれると困るので持ち歩くことさえほとんどしなくなった。それこそなんのためのスマホかと思うこともあるが、今の様な治安では常時携帯することは危険すぎる。タクシーの運転手が、客の電話番号や個人情報を入力した携帯を盗まれて困ったという話をよくきくし、もし、盗まれると、仕事も入らなくなる。

しかし、これは、僕の様な小心者の考えで、一般ブラジル人は盗まれることなどはあまり考えないようだ。知人に聞くと「そんな悪いことは考えない」と言われて、それ以上聞く気がしなくなった。

治安が悪い上に、銀行のブラックリストに載った人や信用が無い人はクレジットカードを造れないし、老人などスマートフォン自体を持っていない人も多い。それだけにいくらアプリで店の商品を販売するようにしても、最初は新しもの好きの客が増えるかもしれないが、結局、もとの売り方に戻るのではないかと思っている。さらに、せっかく店にアプリを導入してもそれについていける労働者は多くはいないだろうし、信用できる労働者はかなり難しいと思う。  サンパウロ市も、車の罰金やゾナアズーなどを完全にアプリにすることは困難だと思う。

なにしろ、まだまだアプリを利用できるのはほんのわずかの人間だと思われるからだ。

今、アプリは最新技術としてもてはやされているが、結局、もとのシステムに戻るか、アプリと以前の方式の両刀使いになるように思う。

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