ブラジルの中国人

 

今や南米1の問屋街、25・デ・マルソ。偽ブランド商品やおもちゃなど中国製品だらけ。

今や南米1の問屋街、25・デ・マルソ。偽ブランド商品やおもちゃなど中国製品だらけ。

 10年ほど前から、中国人が急増した。東洋人街リベルダージでは、あちらこちら日本語が聞こえていたものだが最近は中国語の方を聞くようになった。リベルダーデの主要通りガルボンブエノ通りの商店経営者も、日系経営者はずいぶん少なくなり中国系の経営者が増加した。

つい4,5年前は、中国人の大富豪? 政治関係者? がリベルダージ周辺の土地を買い漁っていたようで、リベルダージにある、知人のレストランにも買収の打診がもあった。さらに、ニッケイコロニアの象徴のひとつでもあったニッケイホテルの買収の話もあった。ニッケイホテルはからくも日系人が購入し、中国人の手に渡ることはなかったが、周辺の土地・建物の多くは中国資本に売られたようである。市内でも宝石店がビルまるごと買われたりするような話もよく聞いた。この頃はそういう話を聞かないので、中国本国の経済状態があまりよくないのかもしれない。

 中国人が増加することにより、僕の様なほとんど関係ない人間もほんの少し影響を受けた。まず、「シーナ(中国人)」と言われるようになったし、「ニーハオ(こんにちは)」などと声をかけられることが増えた。ブラジル人には中国人も日本人も見分けがつかないのだ。

 25・デ・マルソ(南米最大の問屋街)には、中国の密輸業者が入り込み中国人経営のボックス販売人が激増した。この街は、偽ブランド製品やおもちゃ、電気製品が安いことで全国的にも有名になり、買い求めにくる人が増えた。ボックスの借り賃はうなぎのぼりに上昇し、また貸しのまた貸しのような現象が起きた。中国人はすぐ近くにあるメルカードに買い物に行くようになり、売られる魚が少し変わった。以前は、ほとんど無料だった魚の頭や内臓が急騰した。中国人が何度も「ディスコント(安くして)」を連呼するために、初めから高く売り値を設定し、高く設定した分だけ安くするような魚屋も出てきた。値切らなければ、魚屋によっては高いままで売りつけられた。

メルカードにも中国人が増えた

メルカードにも中国人が増えた

 中国人は、魚を素手で触って自分で選んで魚を買う習慣がある。触られることによってバクテリアが増殖し、手で温められ鮮度が落ちると魚屋は嫌っていたが、魚を食べる日系1世2世が少なくなり、中国人相手の商売に切り替えた魚屋も随分ある。レジが混んでいるときには中国人のおばさんがしらんぷりをして列を飛ばして入り込んだり、閉口することもしばしばだ。

「カーツーッ」と思わず人が振り向くほど大きな声で痰を吐くおばさんがいて、メルカード店の従業員が「ここは俺たちの土地だから、汚すのはヤメテクレ」と激怒しているのを見た。さすがの中国人のおばさんも、あまりの剣幕で従業員が怒りまくるので、恥ずかしくなったのか何も言わないでそそくさと行ってしまった。あたりかまわず痰を吐きまわるという話は聞いていたが、実際見たことはなかった。初めて痰吐きの声を聞いて驚いた。さすがに中国の大都市ではこういう人がそこいらじゅうにいるとは信じられないがどうだろう? おばさんが痰を吐いていたのは、入り口のゴミ箱であるから、それほど文句は言えないとは思うが、もともと綺麗好きなブラジル人には耳を覆いたくなるような声と痰には我慢がならなかったのだろう。

 中華レストランのウエイトレスの不作法さと不愛想は有名で、以前は客がメニューを頼むと、放ってよこしたものだ。しかし、この頃は若くて明るく、話しかければころころとよく話す若いウエイトレスが増えてきた。本国からきたばかりと言う、若い中国娘のウェイトレスと話したことがある。

「ブラジルはいいところよね。1時間も働けば数ドル稼げるわ。中国ではこんなに簡単に稼げれないの」とニコニコしながら教えてくれた。

店のオーナーもブラジル人の客から、ウエイトレスの不作法さに文句を言われたのであろう。多くのお店では、メニューを投げるような不作法なウエイトレスは見かけなくなった。

 よくサンパウロの地方で、本国から連れてこられた女性が薄給で、奴隷の様な扱いを受けて働かされていた、というニュースを見る。しかし、この女性は解放? された後も、同じように雇ってもらうことを望んだらしい。おそらく、本国中国では、このような仕事体系で働かされることは特殊なことではないのだろう。それはボリビア人も同じで本国からやってきた女性や家族が狭い部屋に押し込まれ寝起きを強いられ、縫製工場の奴隷労働がニュースになることはよくある。オーナーはたいていボリビア人である。ボリビアでもこのような工場は多いのであろう。働いていた人の中には、食と住が保障されお金ももらえるのだから満足している、というような人の話も聞く。決して奴隷労働が当たり前だとは思わないが、国が変われば、習慣や風習が異なるのである。ブラジルの法律は労働者に有利になっている。おせっかいなブラジル人が奴隷労働強いられる中国人やボリビア人をかわいそうに思い、告訴するのであろう。しかしそれは必ずしも、働く人が望んでいることではないようだ。

ブラジル人と話していると、「とにかく中国人と韓国人の商売のキツサには呆れるよ」という話を聞く。その中に日本人がはいらないのは、日本移民の歴史はかれこれ100年以上あり、彼らの中では、日本人もブラジル人として認めているところがあるのだろう。さらに、多くの日系移民は農家に入植し、ブラジル人に、まじめで良く働くと高く評価されてきた。そういうところから、「japonês e garantido(日本人は信用できる)」と昔からよく言われる。

つい、この間、セントロの危険区域に行ったところ、中国人の経営するバールや雑貨店があって驚かされた。中国人はブラジル人も尻ごみするような、汚く危険な場所にも商売をしているのだ。特に、ブラジルに渡ってくる中国人は地方からやってくる人が多いようで、どんな所にでも雑草のように生きていく逞しさを感じる。

 

 

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