3月15日 ブラジルが熱く燃えた日-サンパウロ100万人がデモに参加

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 今日のジウマ大統領弾劾要求デモはブラジル全国どころか、ロンドンやニューヨークなど世界10か国で行われるらしい。それだけにブラジル最大の都市サンパウロでどれだけの人々が参加するかが重要になってくる。あいにく、雨が降ったり止んだりの曇り空。こんな天気では、デモの参加者は少ないのでは? と思っていたが、テレビを見るとサンパウロは、2時開始のデモに12時頃からどんどん人が集まっている。ベロオリゾンテもリオデジャネイロも既に数万単位の人々が集まっているようだ。ブラジル人が仕事以外で約束の時間までに集まるのは珍しいことだ。慌てて用意をして、家を出る。デモが行われるパウリスタ行きのメトロは、パウリスタ駅が近づくにつれ、ブラジルシンボル色の黄色と緑色のサッカー選抜シャツを着た人や、国旗を持った人がどんどん増えて行く。駅についたときには、黄色と緑であふれていた。駅の構内で既に「ジウマ去れ、PT去れ!」の雄叫びがいたるところから上がり、笛が煩い程鳴らされている。

コンソラソン駅の出口への長い廊下では、メトロの職員が知らん顔をして携帯電話のようなカメラで人々の動画を撮っていた。こういう嫌らしいやり方は非常に腹立たしい。本当は、なんで撮っているんだ! と問いただしたい所だが、そんなことをすると余計怪しまれるし、いろんなところでビデオカメラが回っているから、どうせ同じである。サンパウロの町には、いたる所にビデオカメラが設置されていてプライバシーなんてないも同然なのである。

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家族連れの参加者も多かった

  駅から地上にでると、既に多くの人々が、集合場所のMASPに向かって歩いていた。黄色と緑色のシャツを着た人や国旗を羽織った人、そして白い紙に「ジウマ去れ、PT去れ!」と書かれたプラカードを持った人々が続々と歩いて行く。女性も男性も、子供も老人もそして犬も歩いて行く。2013年のバス運賃値上げ反対デモから「ブラジルを変えよう!」という熱いうねりとなったデモ運動を思い出した。あのデモの時は、写真を撮っていて人々の熱さを、気持ちを、感じ背筋が震えるような感動を受けた。もしかしたらブラジルは本当に変わるのではないか? という希望が見えた。何しろ、学校の先生が子供達を連れて参加していたし、おじいちゃんやおばあちゃんまでもが参加した。しかし、そんな熱いうねりも、気が付くと収束していた。恐らくPT党を中心とする政治家が、デモ隊の中に煽動する人間を忍びこませデモを激烈化するようしむけると同時に警官隊や機動隊を出動させ、デモに参加する一般市民の気持ちをそいでいったのでは? と僕は思っている。

小さなデモでは滅多に見ない日本のマスコミもやってきていて、取材をしているのが目に入った。参加者は誰も被っていないヘルメットを被り、重装備をしているので嫌でも目に付いてしまう。ヘルメットを腰にぶら下げたカメラマンやTV局の人間が何人かいたので、もしかしたら、荒れる可能性があるという情報が入っていたのかもしれない。道路には警察官の姿はちらほらとみかける程度で、威圧するような姿の機動隊がいなかったので荒れることはないだろうと、思っていた。過去何回かデモに行ったが、デモ隊は行進しているだけなのに、警官隊が煽り立てるようにガス弾をデモ隊に投げ込むのを何度か見たことがある。さすがにこれほどの数の、女性や子供を含む一般市民が集まる中にガス弾を投げ込めば死人が出る可能性もあるし、それこそ犯罪である。もっとも、友人はそれさえあり得るから気を付けて、と忠告してくれたが・・・。

どんどん進んで、集合場所のMASPが近づくと人が増え、前に進むのが難しくなってきた。おそらく2万人以上集まっているだろう。野党や政治結社がトラック上でアジっている。そうするうちに国家が流され、皆立ち止まって胸に手を当て神妙な顔で合唱し始めた。自国の国家を歌うことを拒否する日本人に見せてやりたい光景である。

MASPに着くと、警官が30人ほどいたが、いつもの威圧的な態度や行動をとることなしに姿を消してしまった。これほど集まったら、どうにもならないと思ったのか? 暴動になる心配はないと思ったのか? 

普段のデモにはほとんど参加しないおじいちゃんや、おばあちゃんも、おばさんもおじさんも、子供も、ブラジル色のシャツを着てどんどん集まってくる。まさに、どこからともなく湧いてくるような感じである。トラック上でアジる声に合わせてみんな一斉に拳を振り上げる。その様子を見て、もう、PT党もジウマ大統領もだめだな、と確信した。ジウマ大統領も、テレビできっとこの様子をみているだろうから、退任の覚悟をしたのではないだろうか?

ひとりの顔つきがしっかりした中年男性に聞いてみた。

「ジウマ大統領を弾劾するのはいいけれど、次に誰か少しはましな次期大統領はいるの?」彼は答えに詰まってしまい、数秒考えて

「ルーラ大統領時代の副大統領がなればいいんじゃないかな?」

 ジウマ大統領が辞任したとしても多くの人は次期大統領のことなどあまり考えていないような印象を拭えなかった。

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続々集まる人々

雨が降り始めたので僕は切り上げることにした。雨が降り始めたにかかわらず、市内のいたるところから人々が、どんどんパウリスタに向かってきていた。プラットフォームに着いた列車は次々と参加者を吐きだしては去っていく、やって来る人々はまるで尽きることがない。おそらく、テレビの生中継を見て、刺激を受けてやって来るのだろう。

駅を出たすぐ近くの建物から、2人の小さな子供の手を引いた夫婦が出てきた。4人ともおそろいのブラジル色のシャツを着ている。おそらく今からパウリスタに行くのだろう。連れられていく小さな子供達にこのデモに参加したことをしっかりと覚えておいてもらいたい。そして、大きくなったら少しでもこの国をよくなるようにしてほしい。

僕は、例えジウマ大統領が辞任しても、PT党が野党になっても、今の腐ったブラジルの政治家では誰が大統領になっても同じであると思う。むしろジウマ大統領はましな方ではないのかとさえ思っている。しかし、これだけ多くの人が集まったということは、それだけ今の政権に失望し、そして生活に不満があるということだ。誰が大統領になるということよりも、むしろこの国民の熱いうねりが大切なのだと僕は思う。今の日本に安倍首相を非難するする人は多い。しかし、「アンチ安倍」が国民の熱いうねりにならない限り、巨大な権力は打倒できないだろう。国民ひとりひとりが他人事でなく自分の事として受け止め、行動を起こしていくしかないと思う。

 今度こそ、この国民の熱いうねりを消されることなく、さらに熱く、大きくなることを期待したい。そして、少しでも国民のことを考える政治家が次期大統領になってもらいたい

 

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