老後はどこで

セントロの雑踏

年を重ねるにつれ、老後、何処に住むかを考えるようになってきた。今までは、ブラジルの田舎にでも住めれば、と思っていたが、最近の治安の悪さを見聞きするにつれ考えるようになってきた。以前は、老人や子供など弱者に対して親切にする風潮があった。しかし、この頃は老人を専門的に狙う強盗のニュースを頻繁に見かけるようになってきた。特に経済危機になってから老人が襲われる事件が増えた。今や老人は金を持った格好の餌食なのである。そういう状態で老後をブラジルで過ごすのはあまりにもリスクが大きいと考えるようになったのだ。

ブラジル中を歩いてみて、「ここなら住みたいな」と思ったのは年中温暖な気候のノルデステ(東北伯)に浮かぶモーロ・デサンパウロと呼ばれる小さな島であった。大陸と島を結ぶ船は日に数本しかなく、住民は農業と漁業でひっそりと暮らしていた。この島で半農半漁と書き物でもしながら犬たちに囲まれて住めればと思ったものである。しかし、そんなのんびりした田舎生活は、今のブラジルの治安では到底無理だろう。この島に行ったのは15年近く前だから、もうずいぶんと変わったと思う。あの頃でさえ、世界各地から来たヒッピー風の人が住み着いてポーザーダ(民宿)やレストランを開いていたから、今はすっかり観光地化されているかもしれない。

最近は、田舎だから安全とは決していえない。以前は都会に比べ治安は比べものにならないくらい良かったが、農場が襲われ老夫婦が殺害されたり、小さな町の銀行が襲われたりというようなニュースを良く見るようになってきた。田舎は人が少ないだけに強盗に入られると助けを求めることは難しいし、知り合いばかりだから顔がばれないように殺害することが多い。それだけに怖い。  サンパウロ近郊の町で農業をやっている知人がアパートに引っ越したという。「この頃は麻薬の蔓延で、時間に関係なく強盗が入ってくるから、危なくてもう家にすめないよ。」という。今は町のアパートに住みながら畑に通って農業を行っているらしい。こういう話を聞くと、つくづく泥棒・強盗も様変わりしたと思う。昔は雨や寒い日には襲われることはまずなかった。今は関係なしだ。おそらく麻薬が切れると金を求めてやってくるのだろう

ブラジル人に安全か? と聞いたら逆に「今のブラジルのどこにそんな安全な所があるのか」と問われるようになってきた。それほど、治安の悪化は田舎にも浸透し始めているのだ。もっともサンパウロのような大都会に比べると今でも少しは安全だとは思うが・・・。 

もし、田舎に住み始めても、サンパウロから来たよそ者など、金を持っていると思われるだろうから恰好の標的になるだろう。ブラジル人の怖いところは、仲間と酒を飲んでいて、気が大きくなって突然強盗に変貌してしまう奴が結構いることである。最近は酒だけでなく、さらに麻薬が加わるから怖い。本人にとっては、「つい出来心で」という感じかもしれないが、出来心で襲われ殺されたらたまったものではない。

治安のことだけを考えると、どうやっても、老後は日本で住むことの方に部ある。しかし、僕のように保証も金もない人間にとっては、ブラジルの田舎にでも住んでいる方が、気が楽かもしれない。日本の田舎と言えどもいろいろな規則があり、お金がいるだろう。さらに田舎は田舎で周囲の目が煩しいだろう。ブラジルで強盗に襲われ、たとえ殺されても、その場で終わるのならじくじくと苦しまなくてもいい。  以前。老後を好きなブラジルで暮らしたい、という人がいた。皆に反対されるけれど、どう思いますか? というようなことを聞かれた覚えがある。当時は、後悔の無いよう、お好きにしたらよいのではないですか? と返答したような気がする

。しかし、今聞かれたら、「もし、そこそこのお金があるのなら、日本で悠々自適に暮らすのが一番良いと思います。わざわざブラジルにまで来て身の危険におびえながら暮らすことはないでしょう」と答えるだろう。

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